gemme du parfum

宝石のようにしづかに輝く、香りのおはなし。

映画「セント・オブ・ウーマン」に登場する香り

Sent of Woman/夢の香り」という映画をご存知ですか?

アルパチーノ演じる孤独な盲目の元中佐が、心優しい青年との数日間の交流を通して人生を見つめなおし、新たな希望を見出すまでを描いたヒューマンドラマなのですが、まさにタイトルのとおり、場面を彩る女性達の纏ういくつかの「香水」の名前が登場します。

それぞれの個性や生きてきた道を表すようなセレクトで、香り好きにも見所たくさん!

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まず1つめは「FROLIS/フローリス」。

1730年、英国紳士のための理髪店から始まり、その気品ある香りは歴代の国王や女王にも愛用され、今日ではエリザベス2世女王陛下およびチャールズ皇太子殿下から「王室御用達許可書」を与えられているブランドです。

 

主人公の盲目の元中佐が飛行機の中で、客室乗務員の女性が通り過ぎると

「彼女は英国のコロン、フローリスを着けている。だが言葉はカルフォルニア訛り。英国のレディ気取りのカルフォルニア娘は”ダフネ”」

と勝手に渾名をつけて呼ぶ、面白いシーンがあります。

盲目だからこそ嗅覚が鋭いのですね、すごい…!

 

カルフォルニア娘、と言われていましたが、客室乗務員役の方は美しい女性でまさに上品な雰囲気が英国フレグランスFLORISがとてもしっくりきます。

勝手なイメージですが、純白の花セリンガ、ユリを中心とした「SERINGA」という香りが似合いそう*

 

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ちなみにFLORISは、かの有名なナイチンゲールのために調合した香水もあります。「Sweet Smelling Nosegay」という香りで、直筆のお礼状も残されているそうですよ。どんな香りか嗅いでみたいですね…!

 

2つめはゲランの「MITSOUKO/ミツコ」。

シプレ調のクラシック香水の中でも最も有名な香りではないでしょうか。映画の中では、疎遠にしていた実兄の奥さんが纏っていて、「香水はミツコか?…実に悩ましい。カミさんは欲求不満じゃないか?」と挑発し、実兄を怒らせています。

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3つめは「オグリービー シスターズ」の石鹸。

元中佐が青年と訪れたレストランで出会った、青年が見惚れていた黒いドレスの清楚な女性からただよっていた香りです。その後中佐がその女性ドナとタンゴを踊るシーンが、この映画の中で一番有名な微笑ましくも美しい名シーン!

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「いい香りがする…。何の香りか言わないで。オグルビーの石鹸!」「すごいわ、祖母がクリスマスにプレゼントしてくれたの。」というやりとりがあるのですが、香水のみならず石鹸のメーカーまで当ててしまうとは驚異の嗅覚の持ち主ですね!!

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この石鹸の香りのする女性ドナは、タンゴを習いかけたけれど、彼氏が滑稽だというからやめてしまったという。タンゴを習いたい?ときく元中佐に

ドナは「でも、怖いわ。間違えることが」と。

「タンゴは人生と違い、間違わない。簡単なところが素晴らしい。足が絡まっても踊り続ければいい」という名言があります。

ダンスだけに限らず、そう、踊りつづければ…失敗したとその時は思っても成功するまでやり続ければ…それは間違いなんかじゃないんですよね。

私もとても好きな台詞です。

 

人生の中で間違った選択ばかりして人に嫌われ疎外され、孤独に生きてきた彼の口から出てくるからこそ響く、とても染みる台詞。

そしてその後ドナと元中佐はレストランでタンゴを踊ることに…!

カルロス・ガルデルの優雅な名曲「Por Una Cabeza」バックに、

盲目なのにまるで目が見えているかのような安定感のあるリードがすごい、そしてドナのとっても楽しそうな表情が魅力的なダンスシーンです。

 

ちなみに映画が先か石鹸が先かわかりませんが、このオグルビーシスターズには「TANGO」という香りの石鹸が。

デリケートで新鮮な空気のようなスズラン、ジャスミンを中心としたパウダリーノートだそう。日本では買えないのだけれどいつか欲しい…!

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4つめは、物語ラストに出逢う高校教諭のつけていたCARONの「フルール ド ロカイユ」。”岸辺の花”というなんとも想像力を掻き立てるネーミングの香水。

トワレはスミレやローズの品のある香り。パルファンはアルデハイドの効いた優雅かつ印象的な香りです。

 

同じ名前の香水でもトワレとパルファンとかなり印象が違うので、気になった方は店頭で試してみて!

「岸辺の花」名前の通り、凛と自立しつつも可憐さもある、という女性の二面性を表現した香りです。

つけている香りを当てた後、「この香りをたどればあなたのところへ行ける」という元中佐の台詞に痺れる…!

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「女ってのを誰が造ったのか。神って奴は天才だ。カールした女の髪に鼻を埋めて永遠に眠りたいと思ったこはあるか?女の唇…砂漠を横切った後で初めて含んだワインの味がする」

嗅覚で味わう女性の最上の記憶…まさに『セント オブ ウーマン』というタイトルを現す名シーンも。是非観ていただきたい!

 

熱く語ってしまいましたが、なんだか最近行き詰まってるな〜なんて感じている時に見ると本気で泣けて、明日から頑張ろうって思えるすごく素敵な映画です。

様々な香りを通した女性の魅力も再発見できます。

香り好きな方も、そうでない方もぜひ一度ご覧になってみてください♩