LA RELIGIEUSE/SERGE LUTENS
【La religeuse(ラ・ルリジューズ)/修道女】
無垢な魂を尊び、それを守りたいと願う心は冒涜への耐えがたい渇望に引き裂かれる。
雪のようなジャスミンの純白と、厳格な信仰心の漆黒よ。
善なるものの束縛から我らを解き放て。
(公式サイトより)
先日こちらの香水のサンプルをいただく機会があり、試香してみました。
2015年4月21日発売のセルジュ・ルタンスの最新香調。
セルジュ・ルタンスとは、60年代より様々なジャンルで活躍するフランスが誇る比類なき美のクリエイター。
幼少より美に対する研究心が強く、21歳の時、撮りためたポートフォリオを手にパリのヴォーグ社に訪れると、その場でクリスマス特集号のデザイン担当に抜擢されたという。
その後、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)にてブランドビューティーイメージとコスメティックライン・デザインの総責任者を務めた他、それまで職業としては存在しなかった色彩クリエーターの地位を確立。そして、これをきっかけに映像の世界へと活動の幅を広げ、以降資生堂の広告・カラークリエイション製作や香水の創作など、アーティストとしてマルチな才能を発揮した異才。73歳となった現在も美への情熱は衰えず唯一無二のクリエイションを続けている。
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【ラルリジューズ】はジャスミン、インセンス、シベット(霊猫香)が中心のオリエンタル•フローラル。
禁欲的な“修道女”をイメージして試香すると裏切られた気分になる、背徳感の色濃い重く甘い香り。
黒×白のコントラストをルタンス流に表現したと聞いていたのですが、3度試してやっと納得。つけたては重苦しくのしかかる黒衣のような甘い香り。そして5時間程経った後まさに生花のジャスミンに鼻をそっと近づけたときのような、清潔な白の香りに変化していました。
時間を置くことでガラリと変化する二面性に、大変驚きました…!
いわゆる透明感のあるジャスミン香水の香りも素敵ですが、生のままのリアルなジャスミンが私は一番色気があると思っているので、ふと嗅いだときに心臓を鷲掴みにされたような気分になりました。
本作にはルタンスが生後、幼少期に母と過ごした修道院での記憶の影が潜んでいます。
神に仕える清らかで純粋無垢な存在という汚れなきイメージを持つ修道女と、実際に修道女から受けた自分と母への冷たい仕打ちといった【相反する側面】をひとつの香りとして表現したものだそう。
彼の非常にパーソナルな体験と秘められた記憶が表現された香水。
ルタンスの内面の深い葛藤と美しいものを信じる気持ちが、複雑に絡み合っているような作品だと感じました。
春に発売された香水ですが、ちょうど今頃、秋冬にしっくりくる香りだと思います。
自分自身の内面にじっくりと向き合いたい時、身に纏ってみては…?